平成16年(わ)第726号の第七回公判の傍聴の続き。



2人目の証人に対する検察の尋問から。


拝命は昭和55年4月であり、階級は警部補である。
いくつかの職場の後、平成13年3月にハイテク犯罪対策室に異動し、現在に至る。
平成15年2月まで様々な事件の捜査をしていたが(?)、平成15年2月からは(情報セキュリティ対策係?)で、主に啓発活動の講演を行うなどしている。
ハイテク犯罪対策室への配属以前に、わいせつ(何とか)、児童ポルノ著作権法違反、(麻薬特例法違反?)などの事件に関わったことがある。
平成10年頃からインターネットでの捜査であるが、平成10年頃まではパソコン通信での捜査であった。
ハイテク犯罪対策室では、不正アクセス、(不正指令電磁的記録作成?)、著作権法違反などの事件に関わった。


Winnyについて

Winnyがあると知ったのは平成14年9月頃のことであり、インターネット上の違法情報の検索=サイバーパトロールで見つけた。
Winnyって便利だね」などという書き込みがあり、調べてみるとWinnyファイル共有ソフトだと分かった。
Winny Web Siteだったかで、配布していることを見つけた。
そこからWinnyをダウンロードして解凍し、PC上で起動してWinnyの機能について調べた。
何も分からなかったので、手探りで、一つ一つボタンを押してどういう動きが起こるのかを調べた。
Winnyではファイルの送受信ができることが分かったので、どのようなファイルの送受信がされているのかを調べた。
インターネット上の、主に2chのダウンロード板で、このようなファイルが欲しいなどの依頼が頻繁にあり、著作権者の許可を得ていない可能性の高いファイルがやりとりされていることが分かった。
Winnyでのファイルのやり取りは検挙が難しいと感じた。
それは、ファイルを送っている人が、わざと送信しているのか、キャッシュから送信されているのか、単に中継しているだけなのかは、ネットワーク越しには分からないからである。
アップフォルダにファイルを入れると送信可能になり、ダウンロードした側はキャッシュフォルダにファイルが蔵置され、送信可能になる。
アップフォルダから送信されているのか、キャッシュフォルダから送信されているのかが分からないため、故意が捉えられない以上、どのようにすれば検挙できるのだろうかと思った。
正犯2名を検挙できたのは、他の著作権保護団体から困っているので何とかしないといけないと思ったからである(?)。
WinnyにはBBSがあって、その書き込みから摘発する方策を考えた。
BBSには放流告知があり、そこから故意が捉えられると思った。
放流とはWinnyのネットワークにファイルを流すことである。
スレッドのデータはWinnyを使っている人のPCの中にあり、電子掲示板を作った人のPCの中にスレッドデータが存在すると考えた。
自分自身でスレッドを作ると、自分のPCの中にスレッドデータが作られたため、そうだと考えた。
電子掲示板にはトリップという、書き込んだ人物を特定できるものがある。
トリップとはある文字列を他の文字列にしたものであり、元の文字列が分からなければ同じトリップは作成できないため、スレッドを作ったトリップと書き込んだトリップが同じであれば同一人物である。
掲示板を読むとはスレッドデータをダウンロードすることであり、そのPCへ一瞬だけ接続されるため、そのIPアドレスを特定できる。
スレッドデータはそのスレッドを開設した人のPCに作成されるので、そのIPアドレスを特定することで、スレッドを開設した人を特定する。
IPアドレスをプロバイダに照会すれば個人名が分かるので、これらによりファイル送信の宣言をした人を特定する。
捜査側のこちらのPCが特定のIPアドレスにしか繋がらないようにした上で、Aという映画を流すという書き込みがあったとき、そのAがダウンロードできるかを確認する。
この捜査方法は、平成15年5月または6月頃に考えた。
2名を選んだ理由は、3ヶ月間ほどBBSを見回って、長期間、多くのファイルを流している利用者が特に悪質であるとして選んだ。
平成15年8月12日付の悪質利用者の選定の調書がある。
開設者が書いたと判断できる書き込みから悪質利用者を特定した。
これは甲(51?)号証である。
まとめ方が悪いので分かりにくいですが、スレッドをたてて、かつ放流告知をしており、どちらでも同じトリップを使った人をターゲットにしていたようです。
WinnyのBBSの書き込みから捜査していったのは知っていましたが、スレッドを作り、同じトリップを使った人とまでは知りませんでした。

甲89号証について

平成15年11月27日に被告人宅にて、被告人のPCの中のファイルの確認したのが平成15年12月5日付の検証調書であり、甲89号証である。
目的はWinnyのプログラムソースを押収して、プログラムがファイルを送信可能かどうか確かめるためであった。
開発中のプログラムはHDDの中にあると考え、PCの中のファイルを確認しようとした。
プログラムはソースを見ないと詳しいことは分からないものである。
正犯2名ではファイルが送信されていたことは分かるが、詳しいことはソースを解析しないと分からない。
WinnyC言語だが、このタイプのプログラムはコンパイルしないと実行できない。
自分はあまり詳しくないので、検証の時にはプログラム言語に詳しい技官を同行した。
しかし、その場での解析は難しいので、被告人の説明をもとに検証を行った。
被告人宅を捜索しようとしたのは、Winnyを配布していた無料ホームページスペースが被告人の名義になっていたためである。
検証は自分、補助として同室から1名、他に警察庁の技官2名と京都府警の技官1名を同行し、警察庁の技官はプログラムに詳しく、京都府警の技官はネットワークに詳しい者である。
Windy製PCを主として検証したのは、「これで開発しました」と被告人が指さしたからである。
部屋の真ん中にベッドがあって、その横にWindy製PCがあり、「なるほど、いつでも使える状態のこのPCで作っていたのだな」と思った。
そのPCの電源は切れていて、自分が電源を入れた。
Winnyのプログラムソースの場所を被告人に尋ねると、「ここです」と場所を教えてくれた。
Windy製PCに実行可能なプログラムがあり、場所は被告人が教えてくれた。
被告人に今まで配布していたファイルがあるか尋ねたところ、場所を教えてくれ、配布したWinnyのバックアップはすべて残っていた。
ソースが実行可能にできるかどうかを確認するつもりだったが、同行した巡査が「おまえは2ちゃんねらか」などと被告人に聞いていて、被告人はムッとした様子だった。
被告人の協力が得られなければその場での検証ができないので、機嫌を取るつもりで「2ちゃんねらから神様のように思われているのだよな」と言うと、被告人は「2ちゃんねらは使うだけの人間」などと言った。
それを聞いて、自分は被告人が、2ちゃんねらと仲良くやりとりをしていたのを見ていたので、驚いた。
「何か共有しているのか」と聞くと「私のWinnyはアップロードできない」と言った。
そのようなことは全く知らなかったので、被告人の機嫌が悪いままだと、どのソースを掴まされるか分からなかったので、被告人の協力なしでは無理だと思った。
自分は、Winnyはファイルを共有する精神を持つものだと考えていたため、「なぜアップロードできないのか」と聞いた。
(弁護側から、証言の内容が被告人の過去の発言の範囲にまで広がっているとの指摘)
印象的だったのは「人間には役割があり、自分はプログラムを組む。他の人間が共有してくれればいい。もちろん自己責任でね」と言ったことだった。
この方、聞かれたことに対して答えだけを言うように指示されているのに、いろんな事をしゃべります。
そのおかげでいろんな事が分かったわけですが。
被告人が2ちゃんねら仲良くやりとりをしていたのを見ていたらしいですから、47氏=被告人だと思って捜索に行ったようです。
47氏と呼ばれる人物の書き込みが被告人の書き込みであるという証拠は、検察側から明示されたのでしたっけ?
被告人は、捜索を受けたときにも自己責任でファイル共有をして欲しいとの発言をしているじゃないですか。


次に、被告人の発言通りにアップロードできないWinnyがあるかどうか確認した。
そのままの状態でWinnyを起動すると、HDD内のファイルの状況が変わる可能性があるため、フォルダの状態を確認しようとした。
アップフォルダを探したところ、アップフォルダは無かった。
元のダウンロードフォルダは空だったので、他の場所にあると思い、ダウンロードフォルダを検索して見つけた。
キャッシュフォルダを探そうとしたところ、ダウンロードフォルダを探していたのを見た被告人が場所を教えてくれた。
写真番号24、25は、ダウンロードしたファイルの確認を確認した様子であり、多数あったので代表として一部を載せた。
写真番号26は、キャッシュフォルダを確認した様子である。
アップロードできないと言うWinnyを使って、アップロードできないかどうかの確認をした。
写真番号29-32は、画面を順に切り替えて、どのようなものがあるのか(通常のWinnyとどう違うのか)を確認した様子である。
写真番号30は、ダウン条件の設定の様子である。
写真番号31は、検索ワード履歴の様子である。
予め用意したダミーファイルを利用して、こちらから府警に連絡して、そのファイルを送信しようとした。
プログラムソースの押収が目的だったのに、ダミーファイルが用意されていたのは、ネットワークを利用した犯罪には、全てではないが多くの場合にダミーファイルを持って行くため、渡されたときにはそれと同じように思って受け取り、持参したためである。
場合によっては、ソースをその場でコンパイルして、作成したプログラムでダミーファイルの送信の確認をしてから、差し押さえるつもりだった。
写真番号33-39は、アップロードできなかった様子である。
プログラムソースのコンパイルは被告人の説明に従って行った。
写真番号46-52は、コンパイルして実行可能にした様子である。
結果は、調書の通り、アップロードはできなかった。
被告人が「デフォルトの状態ではアップロードできないプログラムができるのです」と言い、その説明によれば、定義ファイルの#define DOWNLOADONLY(?)と#define DEBUGを削除してコンパイルすると配布しているWinnyが作成されるそうなので、それに従って削除してコンパイルした。
写真番号52-62は、アップロードのできるWinnyコンパイルの様子である。
写真番号57は、定義ファイルの様子である。
写真番号62-67は、該当行を削除してコンパイルしたときの実行型のWinnyの様子である。
同行した技官が、被告人に暗号化と圧縮について尋ねると、いいところを聞くねと、1.5MBほどあるのを600KB程度に圧縮すること、逆アセンブルを防ぐために暗号化することを説明した。
お願いというかたちでWinnyの配布ページを削除するように要請したところ、「警察が来たら配布をやめるつもりだった」としてすぐにホームページを削除した。
写真番号26の説明部分に「F:\cache cache内の79.9GB」と記述してあるが、写真内には79.7GBとあるのは、説明を書き間違えただけである。
甲160号証について

Winny内で、ファイル名に「合法」とあるファイルについて調べた、平成16年5月30日付の調書である。
「合法」という検索ワードで、違法ファイルがあるかどうかを調べるために行った。
平成16年5月30日にハイテク犯罪対策室で行った。
「合法」というファイル名で検索したところ、ほとんどがポエムなど合法と思われるものであった。
中には、タイタニックマトリックスなどという市販されている映画を流用したものもあった。
別紙13-16は、その様子である。
別紙14に、作品内に、タイタニックの画像が流用されている様子があり、映像ではなく画像を流用している。
「合法」で検索にかかったポエムなどでも、何をもって合法と見たのでしょうか。
市販されている詩歌の本を引用元を示さずに無断でテキストファイルに書き写してWinnyで流されていたとしても、それを見ただけでは分かるはずがありませんし。


続きはまた明日